Oxford Nanopore User Group Meeting, Tokyo
6月1日(月)、東京日本橋にて開催! オックスフォード・ナノポアテクノロジーズのシーケンシングを活用する国内研究者による魅力的な講演シリーズです。 本セミナーでは、ナノポアチームによる技術・情報アップデートに加え、講演者とのQ&Aセッションや製品展示も予定しています。ぜひお誘い合わせの上ご参加ください。
定員に限りがございますので、お早めにご登録ください。
時間 | アジェンダ (予定) | 演者 (敬称略) |
|---|---|---|
13:00 – 13:30 | *レジストレーション * | |
13:30 – 13:35 | ご挨拶 | オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ |
13:35 – 13:55 | Latest Advances from Oxford Nanopore Technologies at London Calling 2026 | 大崎 研 オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ |
13:55 – 14:25 | 日本人完全版ゲノム配列における複雑な遺伝的多様性 | 白石 友一 先生 国立がん研究センター |
14:25 – 14:55 | 標的領域特異的ロングリードメチル化解析手法t-nanoEMの開発と応用 | 関 真秀 先生 東京大学大学院 |
14:55 - 15:25 | 完全長RNAシークエンスによるヒト遺伝子カタログの拡張 | 竹内 一博 先生 京都大学大学院,医学研究科 |
15:25 – 15:55 | コーヒーブレイク | |
15:55 – 16:25 | ウルトラロングリードによる植物のT2Tゲノム解読 | 白澤 健太 先生 かずさDNA研究所 |
16:25 – 16:55 | Nanopore PromethIONを用いた野生動物ゲノム解析:新規ゲノム決定から保全・感染症研究への展開 | 鍋島 圭 先生 国立環境研究所 |
16:55 – 17:15 | Oxford Nanopore technical update | 小出 清乃 オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ |
17:15 – 17:20 | 閉会のご挨拶 | オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ |
講演要旨
超並列シーケンス技術の進歩により、ヒトゲノム変異、集団史、進化に関する理解は大きく広がってきた。しかし、従来のショートリードシーケンスでは解析が困難な領域が、ヒトゲノム中には依然として多く残されており、特にセントロメアやセグメント重複領域のような、高度に反復的で構造的に複雑な領域は、いわばゲノムの「ダークマター」として未解明であった。近年、ロングリードシーケンス技術の革新に加え、ゲノムアセンブリおよび情報解析アルゴリズムの発展により、テロメアからテロメアまでに近い完全版ヒトゲノム配列を集団規模で再構築することが可能になりつつある。これに伴い、世界各地のパンゲノム研究が活発化し、これまで解析困難であった領域における遺伝的多様性、またそれらに付随する疾患の解明が加速度的に進もうとしている。
本発表では、我々が進めている日本人パンゲノムプロジェクトを紹介する。本計画は、約100名の日本人個体から得られる完全版ゲノムアセンブリを生成・統合し、一般に公開することで、日本人集団におけるゲノム多様性をより完全に捉え、ヒト多様性、ゲノム進化、疾患関連変異の研究に資する基盤を構築することを目指している。このリソースによって得られる知見の例として、日本人ゲノム間における複雑な構造変異や、セントロメア領域の遺伝的多様性に関する予備的な結果を紹介する。
超並列シーケンス技術の進歩により、ヒトゲノム変異、集団史、進化に関する理解は大きく広がってきた。しかし、従来のショートリードシーケンスでは解析が困難な領域が、ヒトゲノム中には依然として多く残されており、特にセントロメアやセグメント重複領域のような、高度に反復的で構造的に複雑な領域は、いわばゲノムの「ダークマター」として未解明であった。近年、ロングリードシーケンス技術の革新に加え、ゲノムアセンブリおよび情報解析アルゴリズムの発展により、テロメアからテロメアまでに近い完全版ヒトゲノム配列を集団規模で再構築することが可能になりつつある。これに伴い、世界各地のパンゲノム研究が活発化し、これまで解析困難であった領域における遺伝的多様性、またそれらに付随する疾患の解明が加速度的に進もうとしている。
本発表では、我々が進めている日本人パンゲノムプロジェクトを紹介する。本計画は、約100名の日本人個体から得られる完全版ゲノムアセンブリを生成・統合し、一般に公開することで、日本人集団におけるゲノム多様性をより完全に捉え、ヒト多様性、ゲノム進化、疾患関連変異の研究に資する基盤を構築することを目指している。このリソースによって得られる知見の例として、日本人ゲノム間における複雑な構造変異や、セントロメア領域の遺伝的多様性に関する予備的な結果を紹介する。
白石 友一, 国立がん研究センターロングリードシークエンスは、ショートリードがマッピング困難な領域のDNAメチル化解析や、変異・多型とのメチル化の関連解析などに非常に有効である。また、DNAメチル化解析では制御領域などの限られた領域を高深度で解析することが重要である。しかし、領域特異的なロングリードメチル化解析には、大量のDNAを要する。そこで、微量DNAから実施可能な酵素による塩基変換を利用したロングリードメチル化解析手法nanoEMをハイブリキャプチャー法に適用することで、標的領域を高深度で解析可能なtargeted nanoEM (t-nanoEM)法を開発した。t-nanoEMは最少8 ngのDNAから実施でき、500X以上のカバレッジでの解析が可能であった。ロングリードの性質を活かして、アレルごとのメチル化状態を検出するためのパイプラインを構築した。さらに、がん組織切片から切り抜いた微小サンプルに適用し、がん進展に伴うメチル化状態の変化を検出した。
ロングリードシークエンスは、ショートリードがマッピング困難な領域のDNAメチル化解析や、変異・多型とのメチル化の関連解析などに非常に有効である。また、DNAメチル化解析では制御領域などの限られた領域を高深度で解析することが重要である。しかし、領域特異的なロングリードメチル化解析には、大量のDNAを要する。そこで、微量DNAから実施可能な酵素による塩基変換を利用したロングリードメチル化解析手法nanoEMをハイブリキャプチャー法に適用することで、標的領域を高深度で解析可能なtargeted nanoEM (t-nanoEM)法を開発した。t-nanoEMは最少8 ngのDNAから実施でき、500X以上のカバレッジでの解析が可能であった。ロングリードの性質を活かして、アレルごとのメチル化状態を検出するためのパイプラインを構築した。さらに、がん組織切片から切り抜いた微小サンプルに適用し、がん進展に伴うメチル化状態の変化を検出した。
関 真秀, 東京大学大学院ヒト遺伝子は、転写開始点、選択的スプライシング、転写終結点の多様な組み合わせを含む転写制御によって細胞種特異的なトランスクリプトームを生み出し、発生、分化、疾患などにおいて重要な役割を果たす。これらの転写物構造を体系的に収載したカタログは遺伝子発現解析の基盤であり、継続的に更新されてきた。近年では、ロングリードRNAシークエンスにより同定された転写物構造も取り入れられているが、依然として不完全である。ロングリードRNAシークエンスは複雑なアイソフォーム構造を解読する強力な技術だが、転写開始点から終結点までを一貫して正確に捉えることは容易ではなく、多様なヒト細胞種を対象とした大規模かつ体系的な解析も十分に進んでいない。そこで本研究では、転写物の完全長構造を正確に同定する独自のシークエンス法を約500のヒト細胞および組織サンプルに適用し、従来のカタログには収載されていない遺伝子およびアイソフォームを大規模に同定した。新たに同定された遺伝子候補の転写は細胞種特異性が極めて高く、特定の細胞種や疾患でのみ同定される傾向が見られ、さらに一部はタンパク質を翻訳する可能性も示唆された。本研究は、疾患や多様な生物学的現象に関与しうる新たな遺伝子候補を提示し、分子経路の解明および創薬標的探索の基盤となることが期待される。
ヒト遺伝子は、転写開始点、選択的スプライシング、転写終結点の多様な組み合わせを含む転写制御によって細胞種特異的なトランスクリプトームを生み出し、発生、分化、疾患などにおいて重要な役割を果たす。これらの転写物構造を体系的に収載したカタログは遺伝子発現解析の基盤であり、継続的に更新されてきた。近年では、ロングリードRNAシークエンスにより同定された転写物構造も取り入れられているが、依然として不完全である。ロングリードRNAシークエンスは複雑なアイソフォーム構造を解読する強力な技術だが、転写開始点から終結点までを一貫して正確に捉えることは容易ではなく、多様なヒト細胞種を対象とした大規模かつ体系的な解析も十分に進んでいない。そこで本研究では、転写物の完全長構造を正確に同定する独自のシークエンス法を約500のヒト細胞および組織サンプルに適用し、従来のカタログには収載されていない遺伝子およびアイソフォームを大規模に同定した。新たに同定された遺伝子候補の転写は細胞種特異性が極めて高く、特定の細胞種や疾患でのみ同定される傾向が見られ、さらに一部はタンパク質を翻訳する可能性も示唆された。本研究は、疾患や多様な生物学的現象に関与しうる新たな遺伝子候補を提示し、分子経路の解明および創薬標的探索の基盤となることが期待される。
竹内 一博, 京都大学大学院 医学研究科ロングリード技術によるDNAの配列分析技術の発達に伴い、染色体の片方のテロメア末 端から逆のテロメア末端までを隙間なく完全に読み切れるようになった。このようにし て解読されたゲノム配列はテロメア・ツー・テロメア (T2T)配列と呼ばれる。演者らは これまで100を超える植物の全ゲノム配列解析を実施しており、最新の解析技術と独自 のノウハウを統合することでT2Tゲノム配列の構築に成功した。それらのゲノム情報はK azusa Genome Atlas ([https://genome.kazusa.or.jp)から公開している]https://genome.kaz usa.or.jp)から公開している 。これらのゲノム情報や解析技術を作物育種に還元するために千葉県農林総合研究セン ターと共同で研究を進めている。本講演では、育種プログラムの一環として実施したイ ネのウルトラロングリード解析に焦点を当てる。従来の解析手法では解読不能として欠 落していた領域が、T2T解読によっていかに可視化され、育種における新たな知見をも たらしたか、その最前線の事例を紹介する。
ロングリード技術によるDNAの配列分析技術の発達に伴い、染色体の片方のテロメア末 端から逆のテロメア末端までを隙間なく完全に読み切れるようになった。このようにし て解読されたゲノム配列はテロメア・ツー・テロメア (T2T)配列と呼ばれる。演者らは これまで100を超える植物の全ゲノム配列解析を実施しており、最新の解析技術と独自 のノウハウを統合することでT2Tゲノム配列の構築に成功した。それらのゲノム情報はK azusa Genome Atlas ([https://genome.kazusa.or.jp)から公開している]https://genome.kaz usa.or.jp)から公開している 。これらのゲノム情報や解析技術を作物育種に還元するために千葉県農林総合研究セン ターと共同で研究を進めている。本講演では、育種プログラムの一環として実施したイ ネのウルトラロングリード解析に焦点を当てる。従来の解析手法では解読不能として欠 落していた領域が、T2T解読によっていかに可視化され、育種における新たな知見をも たらしたか、その最前線の事例を紹介する。
白澤 健太, かずさDNA研究所国立環境研究所では、「タイムカプセルプロジェクト」として、日本国内に生息する希少鳥類・哺乳類を中心に、野生動物由来の細胞および組織試料の保存を進めている。これらの生物資源は、将来的な生物多様性保全、絶滅危惧種の保全管理、感染症研究、進化生物学的研究において重要な基盤となる。 近年、ゲノム情報を活用して生物多様性保全を推進する Conservation genomics の重要性が高まっている。しかし、多くの野生動物、とくに非モデル生物や希少種では、高品質な参照ゲノムが整備されておらず、集団ゲノミクス、比較ゲノミクス、トランスクリプトーム解析、感染症感受性に関わる宿主因子の解析などを進める上で大きな制約となっている。 そこで我々は、Oxford Nanopore PromethION を用いたロングリードシーケンスにより、日本産野生動物の新規ゲノム決定を進めている。本研究では、保存細胞や野外採集試料から高分子 DNA を抽出し、de novo genome assembly、scaffolding、遺伝子アノテーションを行うことで、Conservation genomics に利用可能なゲノム基盤の構築を目指している。 本講演では、希少鳥類・哺乳類を対象としたゲノムプロジェクトを起点に、コウモリ類を対象とした比較ゲノミクス、さらに普通種を含めた野生動物ゲノミクスへの展開について紹介する。これらの取り組みを通じて、Nanopore PromethION が非モデル野生動物のゲノム基盤整備を加速し、生物多様性保全および One Health 研究に貢献し得ることを示したい。
国立環境研究所では、「タイムカプセルプロジェクト」として、日本国内に生息する希少鳥類・哺乳類を中心に、野生動物由来の細胞および組織試料の保存を進めている。これらの生物資源は、将来的な生物多様性保全、絶滅危惧種の保全管理、感染症研究、進化生物学的研究において重要な基盤となる。 近年、ゲノム情報を活用して生物多様性保全を推進する Conservation genomics の重要性が高まっている。しかし、多くの野生動物、とくに非モデル生物や希少種では、高品質な参照ゲノムが整備されておらず、集団ゲノミクス、比較ゲノミクス、トランスクリプトーム解析、感染症感受性に関わる宿主因子の解析などを進める上で大きな制約となっている。 そこで我々は、Oxford Nanopore PromethION を用いたロングリードシーケンスにより、日本産野生動物の新規ゲノム決定を進めている。本研究では、保存細胞や野外採集試料から高分子 DNA を抽出し、de novo genome assembly、scaffolding、遺伝子アノテーションを行うことで、Conservation genomics に利用可能なゲノム基盤の構築を目指している。 本講演では、希少鳥類・哺乳類を対象としたゲノムプロジェクトを起点に、コウモリ類を対象とした比較ゲノミクス、さらに普通種を含めた野生動物ゲノミクスへの展開について紹介する。これらの取り組みを通じて、Nanopore PromethION が非モデル野生動物のゲノム基盤整備を加速し、生物多様性保全および One Health 研究に貢献し得ることを示したい。
鍋島 圭, 国立環境研究所
